業界活用Imprint編集部

不動産広告の写真と景品表示法・おとり広告規制|2024年改正後の注意点

不動産広告の写真は反響を左右する一方、見せ方を誤ると景品表示法やおとり広告規制に触れます。2024年10月施行の改正景表法(直罰の新設)も踏まえ、写真特有の注意点と違反時のペナルティを実務者向けに整理します。

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不動産広告写真と景品表示法・おとり広告規制の概念図。広告写真は実際の物件が原則で2024年改正で罰則強化

図:不動産広告の写真に関わる規制の概念図(2024年改正で直罰規定が新設)

物件広告において、写真は反響を最も大きく左右する要素です。だからこそ「少しでも良く見せたい」という力学が働きますが、写真の見せ方を誤ると、景品表示法やおとり広告規制に触れるおそれがあります。しかも2024年10月に施行された改正景品表示法では、不当表示に対する罰則が強化されました。

本記事では、不動産広告の写真を扱う実務者に向けて、関係する規制の全体像と、写真ならではの注意点、違反したときに何が起きるのかを整理します。

不動産広告を縛る3つのルール

不動産広告は、主に次の3つのルールが重なって規制しています。写真も、これらがいう「表示」に含まれます。

  • 景品表示法(景表法):不当表示を禁止する法律。「優良誤認表示」「有利誤認表示」のほか、おとり広告などの「指定告示」がある。所管は消費者庁。
  • 宅地建物取引業法(宅建業法)第32条:誇大広告等の禁止。著しく事実に相違する表示や、実際より著しく優良・有利と誤認させる表示を禁じる。
  • 不動産の表示に関する公正競争規約(表示規約):業界の自主規制ルール。全国9地区の不動産公正取引協議会が運用し、表示すべき事項や禁止表示を細かく定める。

写真は単なる「飾り」ではなく、物件の品質や取引条件を伝える表示そのものです。文章が適正でも、写真が実態と違えば不当表示になり得ます。

不動産広告を規制する3つのルール。景品表示法・宅建業法32条・公正競争規約の役割と所管を並べた比較図

図:不動産広告を縛る3つのルール(写真もこれらがいう「表示」に含まれる)

写真が「優良誤認表示」になるとき

優良誤認表示とは、品質や内容について実際よりも著しく優れていると誤認させる表示です。写真では、たとえば次のようなケースが問題になります。

  • 過度な加工で実際より広く・明るく・きれいに見せる(極端なレタッチ、欠点の消去)
  • 別の部屋、モデルルーム、過去の状態の写真を現況であるかのように使う
  • 画像合成やCGで、現況と異なる印象を与える

ここで重要なのが2024年10月施行の改正景表法です。従来、優良誤認表示・有利誤認表示は措置命令や課徴金の対象でしたが、改正により、故意にこれらの不当表示を行った場合の**直罰(100万円以下の罰金)**が新設されました。あわせて法人にも罰金を科す両罰規定が設けられています。つまり、行政処分を経ずに刑事罰の対象となり得る点が、従来との大きな違いです。

写真とおとり広告

おとり広告は、景表法第5条第3号にもとづく指定告示「不動産のおとり広告に関する表示」(昭和55年公正取引委員会告示第14号)で規制されています。表示規約第21条は、次の3類型を禁止しています。

  1. 物件が存在しないため、実際には取引できない物件の表示(架空物件)
  2. 物件は存在するが、実際には取引の対象となり得ない物件の表示(契約済みなど)
  3. 物件は存在するが、実際には取引する意思がない物件の表示

写真の文脈では、すでに成約した物件の写真を掲載し続ける、実際とは別の魅力的な部屋の写真で問い合わせを誘う、といった行為が該当し得ます。間取り図を現況と異なるまま使い回す行為も、おとり広告と評価されるおそれがあります。

ここで実務上、誤解されやすい重要な点があります。2024年改正で新設された「直罰」は、優良誤認表示・有利誤認表示が対象であり、おとり広告のような指定告示はその直罰の直接の対象ではありません。 おとり広告は、後述する景表法の措置命令、表示規約の違約金、宅建業法の処分という別のルートで規制されます。「直罰ができたからおとり広告も即罰金」という理解は不正確なので、整理して押さえておきましょう。

おとり広告の3類型(架空物件・取引対象となり得ない物件・取引意思のない物件)と、2024年改正の直罰の対象範囲の整理図

図:おとり広告の3類型と直罰の対象範囲(直罰は優良誤認・有利誤認が対象)

違反するとどうなるか(3つの層)

不動産広告の不当表示は、複数の制度から重ねてペナルティを受け得ます。

  • 景表法(消費者庁):措置命令、課徴金納付命令。措置命令に従わない場合は2年以下の懲役または300万円以下の罰金など。優良誤認・有利誤認には前述の直罰。
  • 表示規約(不動産公正取引協議会):警告・厳重警告、違約金(初回50万円以下、2回目以降は最大500万円)、事業者名・違反概要の公表、ポータルサイト掲載停止など。
  • 宅建業法:指示処分、業務停止、情状が特に重ければ免許取消し。刑事罰として6か月以下の懲役または100万円以下の罰金。

ポータルサイトを集客の生命線にしている事業者にとって、掲載停止や違約金、社名公表のダメージは、罰金以上に大きいこともあります。

違反時のペナルティの3つの層。景表法の措置命令・課徴金・直罰、表示規約の違約金・公表・掲載停止、宅建業法の処分を層別に示した図

図:不当表示のペナルティは景表法・表示規約・宅建業法の3層から重ねて受け得る

写真運用で気をつけたい実務ポイント

  • 掲載する写真は、原則として現況を撮影したものを使う
  • 加工は明るさや水平補正など実態を歪めない範囲にとどめ、過度なレタッチや合成を避ける
  • 撮影日と、現況との同一性を社内で管理する
  • 成約後は速やかに掲載を停止し、写真を差し替える
  • 自社撮影を徹底し、写真の来歴(誰がいつ撮ったか)をはっきりさせる

Imprintにできること・できないこと

Imprintは写真の真正性を検証するサービスですが、ある広告が「おとり広告に当たるかどうか」を判定するものではありません。それは、その物件が実際に取引可能かという事実の問題であり、法的な評価だからです。

Imprintができるのは、写真が撮影時点で本物・無加工であることを検証し、その記録を残すことです。撮影時のハッシュや時刻の記録、画像の編集痕跡の解析(ELA)、生成・加工の手がかりの検出などを通じて、「この写真は確かにこの時点のこの物件のものだ」という客観的な裏づけを作れます。

これは、加工や流用による優良誤認のリスクを下げ、社内のコンプライアンス体制や、万一問い合わせを受けた際の説明材料を支える道具になります。あくまで運用体制を補完するものであり、法令適合性の判断そのものを代替するものではありません。

まとめ

不動産広告の規制は景表法・宅建業法・表示規約にまたがり、改正も行われます。2024年10月の改正で優良誤認・有利誤認に直罰が入った一方、おとり広告はそれとは別ルートで従来どおり厳しく規制されている、という構造を正しく理解しておくことが大切です。

写真は最も雄弁な「表示」です。現況に忠実であること、来歴を管理することが、結局はトラブルとペナルティを避ける近道になります。


本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。規制内容は改正される場合があります。最新の情報は消費者庁、国土交通省、不動産公正取引協議会などの公表資料でご確認のうえ、具体的な判断については弁護士等の専門家にご相談ください。

参考(一次情報):消費者庁「不動産のおとり広告に関する表示」/消費者庁 改正景品表示法(令和5年改正・2024年10月1日施行)関連資料/不動産公正取引協議会連合会「不動産の表示に関する公正競争規約」/宅地建物取引業法。

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